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『パノラマ島綺譚』江戸川乱歩

人生で初めて江戸川乱歩を読んだ。

なんだろう。

どう感想を書いていいのかわからない。

私自身、空想の世界で過ごす時間がたまにあるけど、私なんかの想像力では及ばない圧倒的な世界だった。

ミステリーだと思ってたんだけど、ファンタジーホラー。

私は森見登美彦さんが大好きなのだけど、パノラマを旅しながら『宵山万華鏡』をちょっと思い出した。

私がこの本を手に取ったのはドラマ『あなたの番です』がきっかけ。

ドラマでこの本が話題に出てきて、そのときどハマりしていた私はすぐ本屋で買ってきたんだけど読んだのはドラマが終わって3年近く経ってから。

なんとなく見てたので『パノラマ島綺譚』という本のタイトルだけが頭に残っててどんなシーンか覚えていなかったので調べてみた。

主人公の菜奈がカフェで江戸川乱歩を読んでいたら、もう一人の主人公、翔太に話しかけられてオチをバラされる。

このシーンを見て私は『パノラマ島綺譚』を買いに行ったらしい。

それはさておき「もし宝くじで一等が当たったら?」みたいなことを考えたことがある人は多いはず。

私が大金を手に入れることができたらいろんなところに旅行に行きたい!

わざわざ一行使って言うことでもないか(笑)

みなさんは何に使いますか?

主人公、廣介はもし大金があったら広い土地を買って、大勢の人を使って、日頃考えている地上の楽園、美の国、夢の国を作り出してみせる。

こんなことを考えていたんですよ。

そして学生時代に出会った廣介に瓜二つの男、菰田源三郎が病死したことを知ったのがきっかけで、これを実現する彼にとっておそらく最初で最後の奇妙なチャンスが訪れる。

いくら瓜二つとはいえ発想が怖い。

犯人が殺した人に成り代わったり、真犯人を探すために誰かに成り代わったり、この主人公が言っているように双生児の一方が、他の一方に化けて一人二役をするような話はあるけれど。

なんと言うか、大事にしていたぬいぐるみがほつれて綿が出てきちゃって修理に出したら、戻ってきたぬいぐるみが見た目は同じだけどそれまで大事にしていたものとは別物だったような感じというのかな。

直ったのは嬉しいけどこれは今まで自分が大事にしていたぬいぐるみなのかと、ちょっとした違和感を覚えると、どんどん別のものに見えるような?

まあそんな経験はないですが読みながらそんなことを考えた。

パノラマの旅はどんな仕掛けがあるのか、何がどこまで続いてるのか気になって一気に読んだ。

この先に何が待っているんだろうという怖さを感じながらも先が気になり、進みたいけどどこまで続くのか不安を覚えたり、夢のような不思議な空間で美しい世界なんだろうと思いいつつもなんだか気持ち悪く感じたり。

パノラマの奇妙な世界に引きずり込まれてた。

そしてラストは全く想像できなかった。

まさか、そんな終わり方ある?という衝撃。

自分の理想郷を作り上げることが何よりも大事だった廣介は、それが形になればなるほど現実的な問題が無視できなくなってきて、ある時点からああいう最後を考えていたんだろうなと。

美しいものは儚く散るということですかね。

他の江戸川乱歩の作品も読んでみたくなった。

石榴

この本に収録されていたもうひとつの話。

主人公の警察官が「硫酸殺人事件」の推理を話しているときに疑問に思った。

犯人が硫酸の瓶を用意して待ち伏せ、被害者が空き家に入って来るといきなり手足を縛り上げて…。

そのあと縛った縄をほどいて、着物を取り替え、縄を縛り直す。

よく熟してはぜ割れた石榴を連想するような滅茶滅茶に傷ついて、血に汚れた顔になっていたのに、罪を犯したあとに着物を取替えたら、着物だけ妙にきれいな状態になる。

血を付けたりするにしてもそれを着て殺されたと思われるようにうまいこと細工できるのか。

もともと着ていた方の着物は血が付いてるはずだし、どう処分するのか。

なんだか面倒くさそうだなと感じて犯人は違うんじゃないかと思ったんですが、やっぱり違った。

そのあとの話で着物に触れられる場面はなかったから見当違いな考察だった気もする。

読み進めていくと、この人がもしやって思うんですが、なんというか私も負けました。

はぜ割れた石榴みたいに滅茶滅茶に傷ついた顔って想像するのも嫌だし、そんなこと出来る犯人が怖いのはもちろんなんですが、私が1番恐怖を感じたのはやっぱりそれを画題に一心不乱に絵筆を動かしていた男。

事件の真相に惹きつけられて忘れていたけど、1番サード的傾向を感じたのはあの男だなと。

読み終わって少ししてから思い出してコワっとなった。

サードというか、ただ気の狂ってる人なのか。

マジで怖い。

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この記事を書いた人

読書は好きだけど、年間何百冊も読むタイプではありません。でも好きです。

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